風の谷のナウシカに登場する巨神兵は、ナウシカの世界で「人工的に創造された神」という物語の要となる存在です。
作中に登場した巨神兵はロボットのような見た目をしており、トルメキア軍を率いるクシャナに無理やり目覚めさせられます。
この巨神兵という存在はなぜ生まれたのか?本当はどんな使命をもち、存在していたのか。今回は風の谷のナウシカの象徴的な存在である巨神兵について紹介します。
映画と原作では巨神兵の持つ能力についてや、最後の迎え方が異なります。映画と原作の異なる魅力も比較しながら、ぜひ最後までご覧ください。
巨神兵は人間の世界を制するために出現した「調停者」

巨神兵は「はるか昔に突如として現れた」と人々の間で語り継がれてきました。
言い伝えの「火の七日間戦争」伝説を考えると、誕生は1000年前ではないかと考えられます。
1. 旧世界の人類が創造した人工の神
巨神兵は、人類の文明が発達していた「旧世界」と呼ばれる時代に人間が人工的に創ったとする神で、「調停と裁定の神」と呼ばれています。
巨神兵は世界の腐敗が進み、人がどうにも手を施せなくなった際に、世界に裁定を下す「調停者」という役割を担い、生まれたのです。
2. 邪悪な一族の末裔?
世界に裁定を下せる巨神兵は、とても人類が立ち向かえる存在ではありません。
ナウシカの師であるユパ様の話によると、火も水も効かない巨大な生命体といわれており、あまりの強さから、人々からは邪悪な一族の末裔と恐れられるほどです。
クシャナが巨神兵に命令する際も、「どうした化け物、それでもこの世で最も邪悪な一族と言われた末裔か!!」と言い放ちます。
巨神兵は強力なプロトンビームを放った際、ビームの熱量で身体が崩れてしまいます。それでもなおクシャナの命に従おうと、ドロドロの身体のまま攻撃を続けようとする姿はまるで破壊神のようです。
身体が崩れても破壊に身を注ぐ姿はさすが邪悪な一族の末裔と呼ばれる存在、と感じ、恐怖を覚える1シーンでしょう。
巨神兵と密接に関わる火の七日間戦争とは?

ナウシカの時代で起きている事態を語るにはまず、火の七日間戦争について知る必要があります。
旧世界では人々はナウシカの時代よりもはるかに高度な文明が発達していました。しかし、その文明の影響で地球の大気汚染や環境破壊が深刻化します。
発達しすぎた文明により、地球への負担は大きく、人々の住む世界は腐敗が進んだのです。
人や生物が住めなくなるまで腐敗が進み、世界が滅亡に至ることがないよう、世界を裁定する役割を持って創られたのが巨神兵でした。
1. 戦争の勝者は巨神兵
「火の七日間戦争」は人類対人工の神たちの戦いとなりました。そしてナウシカの時代を見る限り、その勝者は巨神兵たちです。
原作のオーマが発する言葉にも「裁定は下っている」という言葉があり、このことからも旧世界を滅ぼしたのは巨神兵たちであると考えられます。
巨神兵は「調停者」としての役割を果たしたのです。
2. 巨神兵の存在が示すこと
旧世界の人々が創ったといわれる巨神兵ですが、巨神兵以外にも「神」と呼ばれる存在が創られていたことが判明しています。
巨神兵のような存在がいくつか創りだされていたことから、旧世界がいかに混沌とし、人類がどこにも助けを求めることができない状態であったかが伺えます。
3. 戦後の巨神兵
戦争で全てを焼き尽くし、「裁定」の役割を果たしたと認識した巨神兵はその後、地下にもぐり化石と化しました。
世界を焼き尽くすという破壊行為はとてつもなくエネルギーを要し、巨神兵自体にもダメージを与えたのではないでしょうか。ナウシカの時代に至る今日まで長い眠りにつくことになりました。
巨神兵は「調停者」の名にふさわしい破壊力

巨神兵は、旧世界の文明が創った「神」と呼ばれる存在ですが、恐ろしき破壊力を持った兵器ともいえます。
1. 恐ろしい威力のプロトンビーム
プロトンビームは、別名「陽子収束弾」と言われる局所攻撃用ビームです。
目覚めて早々に巨神兵はクシャナより、王蟲を薙ぎ払うためプロトンビームの発射を命じられます。
このプロトンビームが強力で、作中では大量の王蟲を焼き払うシーンが描かれていました。
その爆発的な1シーンを見るだけでもプロトンビームの威力の凄さが計れます。
2. セラミック製の内部骨格
巨神兵は硬質なセラミック製の内部骨格を持ち、見た目は個体により異なります。私たちの世界ではサイボーグと言い表せるでしょう。
映画と原作共に食事を摂るシーンがないため、エネルギー源は不明です。しかし、クシャナが奪った巨神兵の繭に注目すると、繭の中で巨神兵が育っています。
巨神兵は人間やほかの生き物のように、成長する生命体だということです。
人々の巨神兵に対する考え

物語に登場する人々の中の多くは巨神兵を「世界を滅亡させる存在」「復活させてはいけない存在」として恐れる人が多い中、巨神兵に対して違った考えを持った人物もいたようです。
1. 伝説を知る人々の考え
ナウシカが住む風の谷の人々や、ペジテ国の人々の間で巨神兵は、「世界を滅ぼした怪物」「死神」と呼ばれ忌み嫌われる存在です。
巨神兵は旧世界を滅ぼした恐ろしい存在として認識されているためでしょう。
作中ではユパも「何としてもあの化け物の復活をやめさせねばならん。」と谷の住民に話しています。
巨神兵が再び目覚めることはこの世界の人々の死につながると確信していたのです。
2. クシャナの考え

トルメキア軍を率いるクシャナは巨神兵を人々のようにその力を恐れることはありませんでした。
むしろ、世界を支配する力を持つ巨神兵の力で王蟲たちを追い払い、腐海の地を取り戻すことを考えます。
そのため、クシャナは巨神兵の繭を持ったペジテの王女を追いかけ、その繭から巨神兵を目覚めさせる手段を選んだのでした。
>>【風の谷のナウシカ】クシャナの人物像は原作と映画では全然違う?クロトワとの関係は?
不完全な状態で目覚めた巨神兵

クシャナにより、無理に目覚めさせられた巨神兵は身体が育ち切っておらず、未成熟な状態で目覚めることになりました。
その姿はトルメキア軍参謀のクロトワからも「腐ってやがる。早すぎたんだ」と吐き捨てられてしまうほどです。
不完全な状態で目覚めたことにより、プロトンビームの1発目を放った際にビームの熱量に耐えることができずセラミックの身体が溶け出してしまいます。
続けて2発目を放とうとしますが、崩れた身体から威力の凄まじいプロトンビームを放つことはできず、身体が腐り落ちることとなりました。
ナウシカと巨神兵〈オーマ〉の関係

原作の物語には、オームという名前が与えられた巨神兵が登場します。
オームは復活に必要な秘石をナウシカが持っていたことから、ナウシカを母として慕い、ナウシカもオームに対して息子のように接します。
このことからも、巨神兵は高度な人工知能や人間に近い感情をプログラムされていたことが伺えます。
>>【風の谷のナウシカ】主人公ナウシカは蟲の気持ちがわかる!?唯一腐海の正体に気づいた
原作と映画の巨神兵初登場と最期

原作と映画では巨神兵の登場の仕方、そして最期の迎え方が異なります。原作と映画の巨神兵の描かれかたに注目してみましょう。
1. 巨神兵の初登場
映画ではクシャナが奪ったひとつの繭から巨神兵を復活させるシーンが初登場となります。しかし、早期に目覚めさせられた巨神兵の身体の形が固まっておらず、未成熟のまま復活してしまうことになりました。
原作でも初登場の経路は同様ですが、トルメキアの手に渡った巨神兵以外の他の個体も登場します。孵化したばかりの巨神兵は知能も赤ん坊のように幼く、人間を遊びで殺めてしまう場面も。
物語の途中、オーマという名前を得たことで「裁定者」として目覚め、急激に知性が向上します。
知識を持っただけでなく、自分自身が人間より上位の存在であるということも認識するようになるのです。
2. 巨神兵の最期
映画では巨神兵は1発目のプロトンビームを放った際、その熱量に耐えきれず身体が崩れ落ち、2発目を放とうとするも、1発目のダメージからそのまま息絶えることになります。
原作では旧世界の人間が作った、人類再建の知識のしるべである「シュワの墓」の放つ光線を受けたことにより息絶えていました。
>>ナウシカは原作では人工人間だった?風の谷のナウシカの映画では語られない真実
巨神兵の生みの親は庵野秀明
巨神兵のデザインや原案、エヴァンゲリオンで有名な庵野秀明監督です。
確かに巨神兵のロボットにも見える見た目は、エヴァンゲリオンの初号機のデザインにも通じるところがあります。
作画がものすごく難しいと言われ、他のスタッフが嫌がっていた巨神兵をまだ新人だった庵野秀明監督が担当したというエピソードは庵野監督が若い頃から才能に溢れていた、と感じるお話です。
>>風の谷のナウシカで登場する人間は人造人間?都市伝説15選と共に裏設定を解説!
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風の谷のナウシカで巨神兵は世界をリセットする存在

風の谷のナウシカの巨神兵が生まれた理由は、世界滅亡を防ぐべく、「世界をリセットする」目的のためでした。
そのあまりに強大な力をもつ存在は、皮肉にも旧世界の文明がどれほど優れていたかを証明することになります。
原作に登場するオーマは自我を持ち、自分がどのような存在であるかを認識します。ナウシカを母として慕う様子はさながら人間のようです。
映画では、大量の王蟲を薙ぎ払うプロントビームの威力の凄まじさがアニメーションならではの迫力で見ることができます。また、ドロドロに身体が溶け出しながらも役割を果たそうとする姿は圧巻です。
巨神兵の存在理由や、その使命を考えながら映画を見ると、風の谷のナウシカのテーマがさらに深いものだと実感できます。
シーンごとに巨神兵の姿が変化することにも注目して、是非原作と映画を見比べてみてください。
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